love square~四角関係なオトナ達~
「食ってみろ」


スプーンに乗せた、まだホカホカのジャム。


口元まで運ばれたスプーンをそのまま口にくわえると、程良い酸味と甘味、シナモンの香りとレーズンの歯ごたえ。


「ん…。美味しいですけど…」


「けど?」


「ジャムとしては、まだ歯ごたえが強いと思います」


「正解」


「…え?」


「アップルパイなんかにするんなら、この程度。ジャムとして使うんなら、荒熱取ってビンの中へ、明日の夜にはトロみのあるジャムになる」


「…ハイ」


「口はバカじゃねぇんだな」


「口は…!?」


「リンゴも剥けねぇ23の女がどこにいるんだよ?」


そう言って怜玖さんは意地悪に笑った。


「また明日、ここに来い」


「………」


「これがどんだけ変化したかを自分の口で確かめろ。いいか?今の味を忘れるな。今日はもうその手じゃ使い物になんねぇから、帰れ」


「わ、か、り、ま、し、たっ!リンゴも剥けないバカな女でスイマセンッ。今日はこれで失礼しますっ!!」


───バタンッ!!


盛大な音とともにドアを閉め、生まれてこのかた味わったことのない屈辱を抱えて家に戻った。
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