隣の犯罪者?!
確かに新聞には皇夜の名前もあるけど主犯ではないみたい
なんだか複雑な気持ち
「松風あのさ、俺おまえのこと前から好きだったんだ」
あれ?声が重なった?
「典型的」
くくっと押し殺したようなバカにしたような笑い
「誰だ君は?」
「本当、典型的
会社じゃエリートワンコかな?」
恐る恐る視線を真横に向ける
「きっ如月くん」
声が上擦ってしまう
「学校の先公じゃあるまいし」
カチッとライターで火をつける音がする
「誰?知り合い?」
新聞には名前しかのってないし同姓同名だと思ってるんだよね
「従兄弟なの」
「へぇ」
苦しい言い訳だよね
皇夜は悠然とタバコを吸っている
「あの···
お付き合いなんですが」
「ん?」
「前向きに検討させていただきます」
「いいんじゃね付き合っても」
あっちょっと
皇夜は私のコーヒーを飲みながら言う
「本当に?」
「ただこいつは男を知らないから」
さもつまらなそうに冷淡に言い放つ
皇夜は話している間にコロコロ表情を変えていく
いま気づいた、皇夜の鎖骨の下に黒い小さな蜥蜴のタトゥーがあるのに
「私トイレ」
皇夜を押しのけるように席を立った
「男を知らない?」
「たぶん経験ないよ
んであいつのどこがいいわけ?
お人好しで鈍臭くてマヌケ」
「君は知らないだけだ
彼女はとても素晴らしい人」
「妄想と現実は違う」
私はトイレから戻ると皇夜が席を立った
「帰るの?」
「いつまでも邪魔してらんねぇだろ」
皇夜がいなくなると不安でたまらなくなる
「さあ僕たちも行こうか」
それからしばらくデートを楽しんで先輩のマンションに初めてあがった
部屋は皇夜の部屋と比べ物にならないくらい広くてびっくりした
「ご飯の前にシャワーでもどう?」
私は首を振った
ソファーの上でくつろいでいると先輩が近づいてきて髪を撫でるなりキスをしてきた
つい癖でピアスを触ろうとしてしまった
「ずいぶん求めるんだね」
皇夜はキス以外はしなかった
先輩の体重が私にかかり怖くなって目を瞑った
激しい痛みで泣き叫び先輩の頬をひっかいてしまった
「ごめんなさい」
それでもやめてくれなかった
私はそのままソファーの上から起きられず気づけば眠っていた
携帯の時刻は深夜2時
こんな時間じゃ電車もバスもないしなにより腰が痛い
やっとのことで着替えるとマンションを飛び出して大通りまで歩いた
なんでこんなに寂しいんだろう
私はつかまえたタクシーに乗り込んだ
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