溺れる恋は藁をも掴む

華とアキの本当の始まり

 二人で月夜の道を並んで歩いた。
手はギュッと繋いで…


 ねぇ、アキ……

 まだ、手を繋いで一緒に歩くだけで、ドキドキしちゃうよ。

 『好き』ってアキに言われて、まだ信じられない。

 ホッペをつねってみたいけど、今はこのままで……

 アキの手を離したくない。

 夢じゃないよね?

 これは、夢のような現実なんだもん!


 お腹が空いた私達は、アキのアパートの近くの牛丼屋さんに寄った。

 「給料日前は、見栄を張らないの!
これからは、格好悪いとこもドンドン見せるぞ!
 気取らないで、華に見せていくから覚悟してね」 

 直球を投げる、あなたが好きよ。


 「アキ、人間はそんなに完璧じゃないよ。
デコボコな部分があって、それを補ってゆくんだよ。
 一人じゃダメなら、二人で補っていこう。
 そんな私は、デコボコだらけだよ!」


 「俺は、そういう華の真っ直ぐな心が好きなんだ!
 華は、満月みたいに穏やかで俺を癒やす、優しい光を持ってる。

 そういう女なんだよ、華は」

 「アッ、ア、アキ……」
 
 照れちゃうし、嬉しいし、泣きそうだよ……


 「あっ、ヤバイ、100年に一度しか言わねーはずなのに……

 口が軽くなっちまう……

 ダメだなぁ……

 幸せな気持ちは隠しきれないや!

 逆に辛いのは、めいいっぱい隠そうとするのにな…」

 「これからは、辛い事も吐き出して楽になって!」


 ーーもう、瞳の奥に隠さないでーー


 「じゃあ、俺、メガ盛り!」
 
 「へっ!?」

 「腹減ったの……
 これでも、ドキドキしてんの!!
 鈍感だな……華は………
 照れてんだよ!!
 お前に!!」


 「私も……だよ……照れて、嬉しくて幸せで……ドキドキしてるよ、アキに」

  鈍感でも、好きな人の前で素直になりたい。

 その気持ちには、敏感になりたい。
そして、正直になりたい。


 ーー声を大にして叫びたいくらいだよ!


 『アキが大好き!』ってーー



 いつまでも、アキを優しく照らして、癒せる満月でありたい……

 
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