溺れる恋は藁をも掴む
 静かに部屋の鍵を開けて、あなたの部屋に帰った。

 アキは、手にはビジネスバッグと牛丼をぶら下げながらも、格好良くキスをする。


 「続きは焦らなくていいな…
焦る必要なんてないんだから…
 腹、減ったな!」

 「うん…」

 小さなテーブルを囲んで、格好つけずに、アキはメガ盛りの牛丼にかぶりついた。


 食べ終わると、あなたは、正直に百合さんと莉緒さんの話をしてくれたね。

 
  「ーーこんな男だよ、俺はーー
それでもいい?」


 私も本気の直球を投げた。

 「過去があるから、今のアキが居るんだよ!

 過去が今のあなたを作ったの。

 過去のない人間なんて誰もいない。

 女は本気の恋に、藁をも掴む気持ちで挑むわ。

 私は……
アキになら、溺れてもいい!

 もう、100年に一度しか言わないからね!」


 「……俺もそんな華が好き!
なら、100年一緒に居てみる?」


 「100年、最高の理解者で居る自信あるわ!」


 そうね、あなたから最高の理解者の本当の意味を教えて貰ったから、あなたをもっともっと知り、もっともっと理解したい!

 100年で足りますか……?


 「それ、最高すぎる!
段々エッチになっていく華も、全部ひっくるめて好きだよ!」


 「……うぅ……もう!!恥ずかしいよ!!」


 「華……
俺から離れるなよ」

 「アキ、離さないでね」

 「100年経っても離さない」

 「100年経っても離れない」




 離れたりしないよ!

 





 アキ、私もあなたと一緒なんだよ。

 過去があるから、今の私が居るの。
 誠治さんの事は永遠に秘密にするわ。

 ーー言わなくても、いいよね?
あの日、アキは私のクシャッと潰れたまんまの心ごと抱きしめてくれた。

 だから、もう、忘れようって、心は動き出していたのだからーー


 踏ん切りがついて、真っさらな気持ちでアキの傍に居る私は、アキの最高の理解者でしょ?



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