溺れる恋は藁をも掴む
 実咲と裕也はアキと私の高校時代の共通の友人だった。


 二人は卒業後、同じ大学に進学した。
そして、付き合うようになった。

 大学を卒業し、社会人になり、やっと一通りの仕事の流れが分かってきた頃………

 実咲は裕也の子供を妊娠した。
いわゆる授かり婚。


 身内や友人達を招いての結婚披露パーティーで、私はアキに再会したんだ。

 アキは裕也と仲が良く、パーティーの幹事を任されていた。

 久しぶりに会う、懐かしい同級生の顔ぶれの中………


 アキは、格好良くスーツを着こなしていた。

 背も伸びて、メンズファッション誌に登場しても可笑しくないほど素敵な男性になっていた。

 パーティーでも、アキは一際目立った。

 「久しぶり三浦(華)」
と声を掛けられた時はドキッとした。

 「アキ‥‥
幹事お疲れ様!」

 「幹事、ちょー面倒ぃ!
 裕也が頼みこむからよー
まぁ、めでたい席だし引き受けてやったわ!」

 アキは笑った。

 その笑顔に懐かしさが蘇る。


 あの頃‥‥‥

 私は密かにアキに恋をしていた。

 アキと隣の席になった時、窓際の一番後ろの席で、アキは綺麗な横顔で、校庭を眺めていた。

 ドキっとしたけど、その気持ちは内に秘めた。

 アキは特定を作らない主義を通した。

 綺麗な子や可愛い子が告白しても、決して振り向く事もなく、女に興味なしのポーズを崩さない。


 私は自分のルックスに自信が持てなかった。

 そんな私がアキに相手にされるわけないし、アキに釣り合うはずもないと思ったからだ。


 クラスメート、席は隣、イケメン、カワイイ、ミステリアス、綺麗な横顔、優しい瞳、ちょっと影アリなどと、アキに関するワードで、片思いを楽しく妄想していた地味子だった。

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