これを『運命の恋』と呼ばないで!
憔悴しきった様子で退社する私のことを心配して、大輔さんは部屋に泊まりに来てくれた。



「由樹……」


非常事態だというのに体を求められた。
心の拠り所を探り合う様に、自分も彼の背中に手を回した。



「大輔さん……」



不謹慎だと思われるかもしれない。
でも、確かな存在の証として、彼に救いを求める以外に心の平静を保つ方法が見つけられなかった。





翌日も報道関係者の対応に追われた。
業務にならないまま始業時間を迎え、ベルが鳴り響くたびに受話器を上げる。


もしかしたら、空君からの連絡かもしれない。
今は違ったとしても、次こそはきっとそうだ。


信じながら、願いながら対応をし続け、あっという間に正午になった。




「支社へ向かうよ」


長い対策会議を終えた大輔さんは、昼休みに決定事項を教えてくれた。


「俺と営業部長の山崎さんが社長に同行することが決まった。向こうで待機状態に入るから朗報を待っといてくれ」

「私は!?行っちゃダメ!?」


一人日本に残されるのなんて嫌だ。
捜索をするのなら一緒について行きたい。


「向こうもかなり混乱してる様子なんだ。連れて行っても由樹のことにまで気が廻らないかもしれない。だから日本で待っていて欲しい。どんな小さなことでも報告する。留守の間、こっちを宜しく頼む!」


聞き分けろと言われて無理をしつつ受け入れた。

午後からも空君達からの連絡はなく、信じ続けて電話に出たーーー。



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