これを『運命の恋』と呼ばないで!
機嫌の悪さマックスで拒否られた。
こっちは気にしてやってるのに、それすらも迷惑みたいだ。



「……分かった。もう何も言わない」


ムッとして反対側を向いた。

小さな窓からはセメントで塗られた地面と色鮮やかな機体が幾つも並んでるのが見える。

荷物を積んだフォークリフトが忙しそうにウロついてる。

その車輪の動きをひたすら黙って見続けた。




「なつみ……」


先輩の声が聞こえたけど無視した。
私に黙っておけと言ったのは向こうなんだから。



「ごめん。機嫌直せ」


先輩ぐせが抜けきれないらしく、謝り方もどこか横柄な感じがする。


「悪かった。気分悪いからって、なつみに当たるのは間違いだった……ごめん、頼むからこっち向いてくれよ」


肩を掴む手に力が入れられる。
そうまで言われて知らん顔をしておくのも子供っぽい気がしてきた。


「……………」


唇を固く閉じたまま振り返った。
先輩はホッとした表情を見せ、もう一度素直に謝った。


「ごめんな」


しおらしい態度を見せつける。
仕事をしていた頃は、いつも私の方が謝ってばかりだったのに。


「もういいです。それより少し寄り掛かって下さい」


背は低いけど座高は高いと自負してる。
安心した様な笑みを浮かべた後、先輩は私の肩に凭れかかった。



「気持ちいいな」


目を瞑って微睡む。
その様子に見とれながらこれから先の生活を考えた。


< 193 / 218 >

この作品をシェア

pagetop