これを『運命の恋』と呼ばないで!
(しょうがない。私だけ目に焼き付けておこう)


遠くまで見渡せる高さにまで上がった機体は、ゆっくりと旋回しながら上昇を続けていく。




(バイバイ日本。皆、元気でいてね……)


雲に隠れるまで眼下に広がった景色を眺め続けた。

斜めになっていた機体は次第に平衡になり始め、何度も詰まりそうになってた耳もようやくハッキリとした音を聞き分け始めた。



シートベルト解除のボタンが点灯する。
自分のベルトを外す前に先輩のベルトを緩め、それから自分のベルトを外した。



「ふぅ」


声を漏らしても先輩は何も言わない。
眠ってるのか気分が悪いのか、それすらも判別しにくい状況だ。


(つまらない)


新婚旅行も兼ねてこの航空会社にした。
目的地まではかなり時間もあると言うのに。


(起きてよ、先輩…)


コチョコチョと脇腹をくすぐりたくなる。
でも、それをしたらきっと叱られるんだろうな。



(あーあ、退屈……)


英会話の本も読み飽きてしまった。
座席の前に差し込んである航空会社の雑誌に目を通しながら、気付くとウツラウツラし始めていたーーー。



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