これを『運命の恋』と呼ばないで!
事実1
空港内に開設された病院は、いろんな肌の人達でごった返していた。


私達の乗ってた飛行機だけでなく他の飛行機に乗ってた人達もひどい乱気流の影響を受けて、空上での待機時間が長くなったせいだ。


具合の悪くなった人が続出して、後から後から運び込まれてくる。


先輩は青白いの顔のまま簡易ベッドの上に寝かされていた。

座っていることもできない状態で、まるでさっきの夢の続きを見てるみたい。



(……このまま順番を待ってればいいのかな)


声にも出せず心細げに側についた。
電話をかけるのも忘れ、周囲の人達の話し声に耳をすませていた。



(英語、韓国語、中国語……?)


国際色豊かなのは分かった。でも、日本語は少しも聞こえてこない。


(私達だけってことはないよね……)


不安が広がっていく。
オドオドしながら診察を待っていると、チャイナ系のナースがやって来た。



『 You 』


英語で話しかけられ、ビクッと肩が上がった。


『お連れの方の具合はどう?』


キリッとした目のナースが尋ねる。

けれど、英語で聞かれたからサッパリ意味が分からず……



「えっ、あの、その」


読んでた英会話の本なんて全く役に立たず、私は廻りきらない舌の先を奥へと引っ込めた。



『いい?もう一度聞くわよ?』


ゆっくり尋ねてくれるけど、そもそも英単語が出てこない状況でムリ。


(こんな時どうすればいいの!?)


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