これを『運命の恋』と呼ばないで!
今更ながらスゴい後悔をしてる。
どんなに先輩が英語が話せても、こんなグロッキー状態じゃ頼りにもできやしない。


『あのね、他にも患者さんがいるのよ!早く答えて下さい!』


お怒りはごもっともです。
でも、私はホントに英語がニガテでーーー




「お困りですか?」


背中合わせに座ってた人から声をかけられた。
振り向くとそこには白髪の日本人らしき男性がいて。


「大丈夫ですか?代わって話しましょうか?」



……日本語だ。紛れもない日本人だ!



「お、お願いします!私、英語は全くニガテで……」


見も知らぬ人に頼った。
相手の言ってることを和訳してもらい、先輩の状態を教えた。


『病室はいっぱいだからここで点滴をします。準備をしてきますから、そのままここでお待ち下さい』


テキパキと言いたい事を言って、ナースは逃げてしまった。


「点滴の用意をしてくるそうです。ここで待っていて欲しいと言われていました」


茫然と背中を見送ってる私に、白髪の紳士が教えてくれる。


「ありがとうございます。お陰で助かりました」


ペコペコとお辞儀をした。
紳士は「困った時はお互い様です」と言い、笑って受け流してくれた。



「私、青空夏生と言います。こっちでダウンしてる人は旦那さんで奏汰と言います」


やっと話せる人に出会えて嬉しかった。
白髪の老紳士は、「自分はこういう者です」と名刺を差し出してくれた。


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