これを『運命の恋』と呼ばないで!
「『大石病院院長 大石立誠』(おおいし たつあき)様。……お医者様でしたか」


ますます大安心。


「乱気流で機内が相当揺れてましたからな、慌てん坊な誰かが骨折くらいしてるんじゃないかと様子を見にきたところなんです」

「そうだったんですか」


大石先生は確認するように辺りの人を見回した。


「幸いなことに誰も皆、飛行機酔い程度で済んでるみたいだ。この調子なら次の便でシンガポールへ向かっても良さそうだな」


「シンガポールへ行かれるんですか!?私達と一緒ですね!」


「ほぅ。貴方がたもシンガポールへ?ご旅行ですか?」


立ち去ろうとしてた先生は、暫しその場に立ち止まった。



「旦那さんの仕事の関係で、向こうに赴任することになったんです」


ニガテな英語とこれから毎日戦争です…と話した。



「ははは、直ぐに慣れますよ。そのうちきっと話せる様にもなります!」


「……だといいんですけど」


自信は全くない。
でも、住む限りは慣れていかなくてはいけない。


「でも、だったら直行便にした方が早く向こうに着いたでしょうに」


当然のように言われた。


「最初はそのつもりで予定を組んでたんです。でも、旦那さんが乗り物酔いをする人だと知って、ターンオーバーできる便に変更を決めて」


直行便なら連続して7時間は飛行機に乗ってないといけない。
途中で具合が悪くなったとしても、着陸するまでは降りれない。


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