これを『運命の恋』と呼ばないで!
「私ならもう平気です!休まなくても仕事はできます!」


肘も痛いけど動かせない程じゃない。
だからお願い、私を除け者にしないで。


「若山」


鬼先輩が私の隣から声をかけた。
その目をじっと見返し、もう一度「お願いします!」と礼をした。



「無理しなくてもいいのよ」


脇から汐見先輩が顔を出す。
さっき聞こえた二人の会話は何だったんだろうと思いつつ、「無理してません」と返事した。


「じゃあ勝手にすればいい」


鬼先輩はこんな時は有難い。


「その代わり、明日も同じことをしたら許さないぞ!」

「は、はい!」

「じゃあさっさと行って仕事しろよ。皆によーく謝れ」

「と…当然です!」


ダッシュで資料室を後にした。

青空先輩と汐見先輩は、その後少ししてから総務へ戻ってきた。

眠気が吹き飛んだ私はミスを繰り返しながらも残務整理をこなし続け、何とか小一時間くらいの残業でオフィスを出ることができた。




「あーやれやれ。今日もバカ山に鍛えられたなぁ」


背中を伸ばしながら青空先輩が腕を一緒に伸ばす。


「本当にすみません」


ここはやはり謝っておくのが賢明だろう。


「何か食ってから帰るか?」

「ご一緒してもいいんですか!?」

「ああ。一人で食っても旨くないし」

「じゃあお供します!」

「まるで桃太郎の犬か猿かキジみたいだから止めろ、その言い方」


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