俺様彼氏はShy Boy?
ケータイを取り出して、海斗に電話をかけてみる。
自分の家に向かってゆっくり歩きながら、耳に当てたケータイからは鳴り続く呼び出し音。
呼び出し音が切れて。
「もしもし!!」
自分でも驚くほど大きかった声に、近くにいた通行人にチラッと視線を向けられたけれど。
そんなのお構いなしに海斗の名前を呼んでいた。
だけど、ケータイから聞こえてきたのは海斗の声ではなくって。
機械的な女性の録音された声だった。
留守番電話に繋がれた海斗のケータイに。
「電話してください。…待ってます」
そう言葉を残してケータイを切った。
ぎゅっと握りしめたケータイをカバンの中にしまって。
俯き加減でトボトボと歩く。
さっきまで明るかった繁華街を抜けて、その先はチカチカと目が痛くなるようなネオンが見えた。
そんなところを一人で歩くのはやっぱり怖くて。
少し遠回りだとしても、人通りの多い道から帰ろうと方向を変えようとしたときだった。
一瞬、あたしの視界に映った姿。
黒髪で長身の後姿に、バクバクと心臓が暴れだして息苦しくなる。
こんな人混みの中で、見間違いかもしれない。
同じような格好の人なんて、たくさんいる。
立ち止まるあたしを、前からも後ろからも人がすれ違っていく中。
人の流れに逆らって立ち止まるあたしは、ただ邪魔なだけで。
肩や腕が人にぶつかるたびに『ごめんなさい…』とか細い声は、人混みの中に呑まれていく。