俺様彼氏はShy Boy?


今、見えてるものが現実で。

海斗の隣にいるのはあたしじゃない。


海斗は、立ち止まることなく前を見て歩き出したってことでしょ?


「良かったじゃん」


本当にそう思う?


「可愛い子…」


美佳とは正反対の清楚な感じの彼女。

でも、あたしとも違って女性らしい子。


見たくないのに、視線はまた海斗たちへと向いてしまう。


仲良さそうな二人は、見つめあい笑い合う。

穏やかな空気が流れてるように見えてしまう。


そっか。

そうなんだ。


これが、海斗の出した答えなんだね。



ポケットに手を入れて。

手にしたのは小さな巾着。


「ゴメンね、先生…」


あんな雨の中、必死になって探してくれたのに。

あたしには、もう必要ないみたい。


窓を開けて、その先に手を伸ばす。

握った拳の中には、真っ黒なピアス。

目を閉じて。

大きく深呼吸して。

そして、握ってた手をそっと開いた。


あたしの手から、ポロリと落ちていくピアス。

それと一緒に、あたしの瞳からもポロリと落ちた涙。

バイバイ、海斗。


「これでいいんだよね」


誰もいない教室に、あたしの声が空しく響いた。


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