よるのむこうに


「どうだったかな……もうわかんねー……。
お前が逃げたら俺、生きてても意味ない気がしてさー……。
お前、俺の体はわりと好きだろ。だからセックスしたら逃げないかと思った。
……でもそんなもんでお前の考えが変わるってわけでもねえしな。
だから、次は車……。
俺がお前にとって便利な男だったら逃げねえだろと思ったわけ。……結果は逆だったけど。
どうしたらいいんだろうな。俺、馬鹿だから、もうわかんねえよ」


馬鹿な天馬。
自分のためにどうすればいいかなんて自分が一番よく知ってるくせに。
今までずっとそうやって生きてきたくせに。

私の家に居つく前に居た人は、そうやって切ったくせに。
天馬が何も言わなくてもわかる。
自分もいつか、前の人と同じになる。
そう思うからこそ気軽に天馬を受け入れられたし、そしていつかくる別れが怖くもあった。


「自分のために借金するのなら何もいわないよ、いや、ちょっとは言うかもしれない。
でも私のためっていうのは天馬がただ借金をするよりもすごくすごくイヤなの。耐えられないの」

「……はあ……?
わっかんねえよ……。「お前のため」と「俺のため」ってどう違うんだよ。
俺とお前は一緒に暮らしてるんだから同じ事だろ……。お前もずっとそうしてきただろ、お前が飯を作るのは俺とお前と両方のためだろ。今、お前は俺の服もお前の服も一緒に洗って一緒に干した。……だから、お前のためと俺のためは同じだろ、何が違うんだよ」

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