よるのむこうに
「俺は天馬や樋川選手とは別の高校だったから詳しい事情はわからない。
それでも天馬のチームは有名だったよ。
天馬が一年のときすぐにスタメンに抜擢されて全国大会優勝、ウィンターカップ優勝。
引き続き二年のときも全国大会優勝。でもウィンターカップでは樋川選手は故障で出られず、天馬は問題を起こして出場停止。
それっきり天馬はバスケをやめた。樋川選手は先輩として、チームメイトとしてかなり天馬を叱ったり宥めたりしたみたいだけど……そのまま今に至るってわけ」
「それで、バスケをやめちゃって樋川選手に合わせる顔がないからあんなに今日の仕事を渋ってるの?」
彰久君はにっこりと笑ってうなずいた。
「そうだと思うよ。
でも、天馬の気持ちはどうあれ今回は出て貰わないと俺が困るんだ。
うちの事務所に桜井あんなってタレントがいるんだけど、彼女をあの立花プロデューサーの抱えている別番組に出したいんだよね。で、彼にウチの天馬を出して欲しいといわれたってわけ。
一年間も桜井あんなを使って貰うかわりに天馬を単発の仕事に回す、これは破格の交換条件なんだよ。
だから天馬にはこれをうまくこなしてもらわなきゃ困る」
つまり、今回、天馬がいやな顔をすることがわかっていながらあえてこの仕事を引き受けたのは、他の所属タレントを使ってもらうため、そういうことか。
「……うわぁ」