よるのむこうに
なるほど。彰久君は人懐こい顔の裏で、なかなか計算高い一面もあるようだ。
まさか天馬にお金を貸したのは単に「ちゃんと働け」という友人としての気持ちだけではなく、裏にこういう計算があったからなのだろうか。借金があればさすがの天馬だって多少はいやな仕事も我慢もするだろう。
私の気持ちが顔に出ていたのだろうか。彰久君はくすくすと笑った。
「いやだな、例の200万は別にこういうことを見越して貸したわけじゃないよ。単純に、あいつが自立しない事を心配してああしただけ」
「……そっか」
表面的に納得はしたけれど、やはり彰久君は計算高い子なのだろう。
本人はきっと否定するだろうが、笑顔の裏で何を考えているのかわからないところは彼の叔父、景久さんに似ているようだ。
「そういうわけだから、今の天馬に説教はしなくていいよ。無理にこの仕事をやらせているのは俺だから」
「そうだね、しなくていいね」
天馬は社会人として優秀ではない、普段そう思っている私でも今回の彰久君のやり方は少し強引だと感じる。
私の気持ちとしては今回は天馬のほうに軍配が上がった。
「はっきり言うんだね。お詫びにコーヒーをごちそうするよ」
「どうして私にお詫びするの。嫌な思いをしてるのは天馬じゃない?」
「一人でコーヒーを飲むより二人がいいし、男に奢(おご)るのは絶対いやだから」
彰久君は天馬にいやな仕事を押し付けたけれど、少しも悪いとは思っていない。だからコーヒーも奢らない。要するにそういうことなのだろう。