よるのむこうに
「殺したいほどお前が恨めしいけど、……それでも俺はお前を諦めきれない。それはこの二年いやってほど味わった。
だから、お前が耳をふさいだって実家に逃げ込んだって、俺は諦めねぇよ。
こんなどうしようもねえチンピラに懐(なつ)かれて、お前も運が悪いと思う。かわいそうな女だって思うさ。
でも……他のものはなんだって諦められるけど、お前についてはどうしてだか……無理だった。
……だから、お前が諦めて俺のものになれ。お前は俺の一部なんだよ!」
にらむようにきつい目で私を見据える天馬。
彼は私から決して目をそらさなかった。
「何言ってるの……何言ってるの……。私、もうあんたのために何もできないんだよ?迷惑をかけるだけ……」
「何もできなくなんかねえよ。お前がどこかで見てると思うから俺はこの二年、一回も負けナシでやって来れたんだ。
お前がどっかで見てると思うから……とうに捨てたバスケで勝負できてるんだ。お前が言ったんだぞ、バスケをやれってさ、バスケをやってる俺はカッコイイって」
「そんなの、天馬の才能だよ。私は関係ない。あんたはもともと才能はあったんだよ」
「何も知らねーくせに才能なんていうな。俺は毎日ゲロ吐くくらい練習してんだよ」
「……」
あの何事にも無関心で意地というもののない天馬が、吐くほど練習を。
「夏子、さ、忘れてるかもしれねーけど、…………アメリカって英語じゃないと通じないんだろ。
……英語、教えてくれよ。夏子は英語教師だろ、俺、英語なんか喋れねーよ……」
今まで強気で私を責めていた天真の声が弱くなった。
私は顔を上げた。
「…………………あ………………」