よるのむこうに
それなのに天馬はあの日、私の職場前にピンポイントで現れ私を確保した。
いくらこの男の勘がいいからといって何のヒントもない状態で東京から100キロ以上はなれた田舎の町にいる私を見つけることなんてできるはずが無い。
まさかとは思うが身内にスパイがいたのだろうかと考えたりもしたが、私の身内にこんなチンピラと接点のある人なんて居ない。はずだ。
「んー、ああ……」
「何?」
「はなすと長くなる。めんどくせえからまた今度な」
「どうせフライト中は暇なのに今度って何なの?今話してよ」
天馬は小さく舌打ちするとデニムのポケットから携帯を取り出し勝手に見ろとばかりに私の膝に向かって放り投げた。表示された画面には何かのサイトのスクリーンショットが表示されていた。
大きく表示してよく見ると、そこには地域紙の一ページが表示されていて、私の幼馴染が経営する塾が紹介されている。塾生募集と大きく書かれたそのページには当たり前だが一バイト講師である私のことなど少しも書かれていない。
「これだよ」
「どうしてこれだけでわかるの」
「偶然、遠征にいった先のファミレスでフリーペーパーを見てさ。ウェブ版にアクセスするとドリンク無料券がもらえるっつうからスマホでみてみたんだよ。そうしたらこの写真を見つけた」
「でも、これ教室と塾長でしょ」
塾長は私の幼馴染だが、彼女の笑顔には私に繋がる手がかりなど何もない。もちろん私は彼女を天馬に紹介したこともなかった。
「ここ、見ろよ」
天馬は写真の隅に映りこんでいるデスクのあたりを示した。