後継者選びはただいま困難を極めております
難色を示すトシユキとタイガに、

「おやおや戦う前から戦意喪失とは情けない。次期会長の椅子は、私がもらいましたデスかネ」

と、ロバートが挑発的な発言をする。

「ロバートさん、そこらへんにしとけよ。最近やってきたばかりの人間にそういう無責任な発言されると、こっちのモチベーションが下がっちまう」
「どこが無責任ですか? ああ、タイガさん、もしやそれは、自分は会長の跡を継ぐ器ではないという自己申告?」
「な……っ! そうだとは言ってない! 少なくとも俺は、あんたよりはこの会社の役に立ってる人間だという自負がある!」
「だったらいいじゃないデスか。幸いここにいる男たちは全員独身。それなりに野心もある。そして――」

ロバートが、碧眼の視線をヒナに向ける。
とんでもない展開にひたすらあっけにとられていたヒナは、外人特有のいまいち読み切れない表情のロバートに見つめられ、思わずたじろぐ。

「――そして、もっとも幸運なのは、彼女が、生涯の伴侶としろと命じられても苦痛ではない、いやむしろ、彼女こそがもっともラッキーなトレジャーではないかと思えるほどに、キュートであることデス」

「え……っ」

状況のわからないヒナには、キュート、という言葉だけがよく響いて――ヒナは思わず頬を赤くした。

「なにが、キュート、だ。ばからしい……!」

タイガが舌打ちする。
その隣に立っていたトシユキは、しばらくヒナを見つめていたかと思うと、軽く肩をすくめ、言った。

「……まあ、それもそうかなって前向きに考えるしかないか」
「えっ?」
「おじいちゃんのきまぐれは今にはじまったことじゃないしね」
「おい、高見……」
「3ヶ月かあ……じゃあ、できれば僕を選んでね。ええっと……ヒナさん?」

トシユキは、ヒナに向かって一歩進んだかと思うと、マナーの教科書のお手本として出てきそうな完璧な笑顔をヒナに向けた。

「えっ? あ、は、はい……」
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