背伸びして、キス


「・・・あなた、もう今日は帰りなさい」

「え・・・。私、一条さんが起きるまで・・・」

「いつになるかわからないし、仕事の話もあるの。あなたがいれば一条くんだって落ち着かないわ」




何も言い返せなかった。
洋介さんの足手まといになったのは本当だ。



「まぁ。仕事が立て込んでいたのは確かだから。会社の責任も大きい。あまり、気にしないで。さっきのは私の気持ちだから」

「・・・はい」




工藤さんは、洋介さんが好きなんだ・・・。
あのキスだって、きっと酔った勢いじゃなくて、工藤さんの気持ち。

だから、私が洋介さんの側にいるのが・・・。



「一条さんの事、お願いします・・・。失礼します」



工藤さんが言った事、それが全てだ。
私には洋介さんの仕事の事はわからない。
わかってあげられない。

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