わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
あまりの驚きで、どうやら息をするのも忘れていたらしい。
今見た姿は本物だろうか。
まさかそんな、とても信じられない。
でももしも見間違いでないのなら・・・。
そう思うと体の奥底からふつふつと喜びが沸き上がる。
瞳が潤み胸は歓喜にうち震え、いてもたってもいられない。
弾みたくなるのを抑えて何度も深呼吸をして心をしずめ、レナードを見上げた。
「レナードさま、アベルさまは黒髪に鳶色の瞳のお方なのですか?」
「そのとおりだよ。知らなかったのかい?」
「はい・・・知りませんでした」
容姿は合っている。
だが、名前が違う。
他人の空似ということもある。
もう一度しっかり見ようと決意し、ドレスや正装の壁の間から前方を覗き見た。
そして、来賓の挨拶に応えているのはやっぱりレイだと確認する。
その隣でレミーアが来賓に笑顔を振りまいており、まるでレミーアが婚約者のよう。
まさか昨日庭で言っていたことは本当か?と、焦燥感がわく。
だが、国王夫妻はなにも言っていなかったと思えば大丈夫とも感じる。
挨拶の合間にふと顔を向けたレイと目が合い、微笑みかけようとすると、あろうことか鋭い視線を投げられた。
頭を何かで殴られたようなショックに襲われ、ホワホワとしていた気持ちが一気に沈む。