わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
くるんと王太子に背を向け胸を押さえた。
そうだ、レイの中では商人の娘のまま。
ここでなにをしている!?と言われてつまみ出されても仕方がない身だ。
それに、道中ではお転婆なところばかり見られ、何度も叱られている。
あれもこれも思い出せば王女らしからぬことばかりで、サーッと血の気が引いていった。
更に『あなたとの縁など一ミリもない』などと言った覚えもある。
なんということでしょう!と頭を抱えたくなる。
知らなかったとはいえ、どう挽回すればいいのか。
“破談”の二文字が浮かび、哀しすぎてめまいを覚える。
今更後悔してもどうにもならない。
とにかく名乗らなければ前に進めない!と決意を固める。
それには国王夫妻に紹介していただくのが一番いいと考え二人を捜そうとすると、レナードがスッと手を差し出してきた。
「ダンス曲が始まりました。リリアンヌ王女、お相手を願う」
楽師たちが緩やかな曲を奏でており、既にいくつかのペアが中央で踊っている。
忘れてはならない、ここは社交の場。
リリアンヌは、差し出されていた手の上に指先をそっとのせた。
「・・・はい。喜んで」
レナードの優雅なエスコートを受け、リリアンヌはダンスを踊る。
日溜まり色のドレスはステップを踏むたびに裾がなめらかに揺れ、茜色の髪はターンをするたび艶々と輝く。