わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「・・・少し、疲れてしまいました」
そう言ってレナードを見上げた拍子にブラウンの瞳から一滴がほろりと零れた。
レナードの青い瞳が大きく見開かれたあと、心配げな表情になる。
「何かあったのかい?貴公子に何か言われたとか」
「いえ、何もいわれていませんから、気になさらないでください」
「いや。気になるね。よかったら私に話してくれ。ここでは話せないなら、部屋に行こうか」
そっと肩に置かれていた手に力がこもり、ぐっと抱き寄せられ、リリアンヌは嫌悪感を覚えた。
「いえ、話すことは何もありませんから。結構です。ありがとうございます」
やんわりと拒絶しようとするも、手は一向に離れない。
それどころか、ぐいぐいと引き寄せられ歩くことを誘っている。
しつこくて、ずるずると引きずられるようにされてしまい、リリアンヌは肩にある手の甲に爪を立てて引きはがした後、ありったけの力を込めてレナードを突き飛ばした。
「何度も申し上げています。あなたさまには、何も話すことなどございません!!」
少しひっかき傷がついた手の甲を舐めるレナード。
フルフルと震えてひと笑いしたあと、さっきまでの紳士的な態度が豹変した。
青い瞳が据わり笑顔も消え、どす黒い気がレナードの体を包む。