わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

「一曲お相手をお願いします」


差し出された手を見て、もう何人目だろうかとリリアンヌは心の中でため息を吐き、「喜んで」とニッコリ笑って応じる。

ダンスが終わればまた新たな手が差し出される。

その繰り返しで、ちっとも広間の中央付近から下がることができないでいた。

レイに自分がミント王国の王女だと名乗らなければいけないのに、これでは会話を交わすことなくパーティが終わってしまう。


「リリアンヌ王女、お会いできて光栄でした」


スッと礼を取る貴公子に笑顔を返し、リリアンヌはホッと息をついた。

ようやくダンスの誘いの手が止み、広間内を見回す。

すると、レイがレミーアとダンスを踊っているのが目に入った。

スローなテンポの曲で二人は密着しており、うっとりと見上げるレミーアに優しげな笑顔を向けている。


リリアンヌの胸がぎゅーっと痛む。

せっかく会えたのに、自分が許嫁のはずなのに、どうして近づくこともできないのだろう。

何のためにここに来たのだろう。

そう思うと悲しくなり視界がぼやける。


リリアンヌは気分を変えようと、風にあたりにテラスに出た。

談笑しながら庭を歩く男女が見え、自分もレイと歩けたらどんなにいいだろうと思う。

宿場街の夜二人で歩いたことを思い出してしまい、ますます視界がぼやけた。

テラスの柵に寄りかかり、わきあがる切なさと戦う。

そんなリリアンヌのそばに、近づく人がいた。


「どうしたんだい。こんなところで一人とは」


華奢な肩にそっと手をのせるのは、レナードだった。

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