わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
藍色の空が朝焼け色に染まり、早起きの鳥が夜の終わりを告げる。
山の間からのぞいた日が緑の葉を透かし、柔らかい光を野営地に届けた。
「もうそろそろだな」
夜明けの火番をしていたマックは細い枝を火にくべて、スッと立ち上がった。
火に一番近い場所にあるのは王女のテント。
その隣にメイドのテントがあり、そのふたつを囲むように騎士たちのものが三つある。
「おい、起きてるか」
声をかけられ起き出した皆が、きびきびと準備を始める。
その話し声と物音で目覚めたリリアンヌは、いつもと違う天井をぼんやりと見つめていた。
どうしてだろうか、金の装飾のある天蓋も花模様の透けるカーテンもない。
しかも体が少し痛いし、毛布は窮屈だ。
「・・・ここは、どこ?」
そう呟いた一瞬後、旅に出ていることを思い出した。
初めての寝袋での就寝は、お世辞にも心地いい眠りを提供してくれたと言えず、起き上がれば体のあちこちがギシギシする。
着替えを済ませてテントから出ると、皆が朝の挨拶をしながらも荷物をまとめたりテントを畳んだりしていた。
リリアンヌはうーんと体を伸ばして深呼吸をした。
朝の冷たい空気が肺に満ち、スッキリとする。
「今日もいい天気で良かった」
「リリさま、おはようございます」
「おそばに来るのが遅くなりすみません」
ぱたぱたと駆け寄ってきたハンナとメリーの表情は冴えず、リリアンヌ同様にあまり眠れなかったとみえる。
彼女たちも初旅なのだ。
「おはよう、ハンナ、メリー」
リリアンヌは、そんな二人をいたわるように優しい微笑みを向けた。