わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「はい。丁寧に立たせてくださって。そのときのお声も素敵で・・・まだ耳に残ってます」
恥ずかしそうに話すメリーは耳まで真っ赤に染まっている。
「それで、その騎士さまはどなた?」
「列の先頭の右側のお方です」
「まあ!それってトーマスさまじゃないの!メイドの間で、たまに『素敵』って噂にのぼるお方よー」
きゃあきゃあと頬を染める二人は、とても嬉しそうで楽しそうだ。
トーマスといえば同行騎士の中では二番目に若く、確か二十二歳でアベルと同じ歳。
リリアンヌは、二人の会話を楽しく聞きながらもふと疑問に思ったことを口にした。
「ねえ、ハンナ。騎士の腕に支えられると、どうしてドキッとするのかしら?」
きょとんとした表情で尋ねるリリアンヌを見て、ハンナは一瞬固まった。
メリーも同じ反応をしたあと、ハッと何かを思い付いたような表情をしてハンナのほうを向いた。
「ハンナ。きっとリリさまは、普段から騎士さまに接しておられるから分からないのですわ」
「あ、そ、そういうことでしょうか。そうですわね」
ハンナはコホンと咳払いをして姿勢を正し、リリアンヌに“乙女心”について講義を始めた。
「リリさま、いいですか。私たち女性はかよわいのです。倒れていく人を片手で支えるなど到底無理なことでございます」
「ええ、分かるわ。一緒に転んでしまうわね」