わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「これ素敵ですわ!リリさまにお似合いです!」
「本当に。この日だまり色のがいいですね!ドレスを仕立てたら素敵!」
ハンナとメリーが異国の美しい色の反物に目を奪われ「リリさまのためにどれを購入しましょうか?」と吟味している中、リリアンヌは違う店に目を留めていた。
店主は浅黒い肌に紫色の髪の女性で、お店を見ている人が少ない。
商品台を見れば、扱っているのは石ばかりのよう。
なんとなく気になり近づいたリリアンヌは、少し首を傾げた。
あるのはどれもが歪な形の石で美しいとはいえず、何の脈絡もなく無造作に並べてあるだけだ。
「店主さん、これはなんですか?」
「鉱石さ。全部、宝石になる前の原石。ここには、宝石商に売った残りを並べてるのさ。そう、お嬢さんの胸にあるのも鉱石だよ」
「え?このお花の宝石が、これらと同じ鉱石なのですか?」
「そうさ。それは、この石だね」
店主は歪な三角形の石を手のひらにのせた。
「これが・・・?」
リリアンヌはまじまじと見つめる。
それは白っぽくて濁った桃色に見え、艶々と輝く宝石と同じとは到底思えない。
だって花の宝石は、この帆布の下でも薄桃色に煌めいているのだから。