わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!
「これを、磨いて削ればそんなふうに輝きを放つのさ。元はこんなガラクタに見えるのに、手を加えれば美しくなる。原石は、先を想像して楽しみにできるから、私は好きさ。どんなふうに形を変えて、どんな人の手に渡るのか。どうだい?そう考えると、ちょっとしたロマンだろ?」
そう言って店主はウィンクしてみせる。
茶目っ気たっぷりな笑顔が可愛くて、リリアンヌもつられて笑った。
「はい、とても素敵ですね」
「だろ?それにね、鉱石にはそれぞれ意味があるのを、お嬢さんは知ってるかい?」
リリアンヌが首を横に振って、知りませんと言うと、店主は持っていた石を黒い台の上に置いた。
そのとなりに、手近にあった漆黒の石と水色の石を並べる。
「私の国ではね、大切な人に思いを込めて石を贈ったり、願いを込めて持ち歩いたりするのさ。そのために石の意味を重要視する」
浅黒い指先が、水色の石から順番に一つずつ指していく。
「これは、“幸運な人生”。誕生祝に贈る人が多い。これは“魔除け”で、旅人に超人気!ここで一番の売れ筋さ。お嬢さんのと同じこの石は、“変わらぬ思い”。大切な人に贈るのが一般的だよ」
「変わらぬ、思い・・・」
「それにこの石は固くて加工が難しいんだよ。その宝石の花を作ったのは、すご腕の職人だねぇ。まったく素晴らしい!大事にするといいよ!!」
「ありがとう」