わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

アベルがそれを知ってて贈ったのか分からないが、石の意味が知れて嬉しくなった。

これはとても面白いし、加工してアベルに贈るのも素敵だ。

素敵な意味を持ついい石はないかしら?と店主に聞きながら探すと、鳶色の石があるのに気がついた。

瞬間的にレイの瞳と重なってしまい、胸がトクンと鳴る。

アベルのことを思っていたはずなのに、昨夜優しく見つめてくれた鳶色の瞳が鮮やかに蘇り、同時に頬に触れてきた手の温かさも思い出してしまう。

次第に頬が熱くなってきて、慌てて手のひらで隠す。

これはなんてことでしょう!と、目をつむってぶんぶんと頭を振ってレイのことを必死に追い出してると、あろうことか目がまわってしまった。

やりすぎたと思っても後の祭り。

平衡感覚を失ってくらりとふらついた体をマックに支えられて事なきを得るが、視界はくるくるまわり、体もぐるぐる回って気持ち悪く、リリアンヌは声も出せない。


「リリさま、大丈夫ですか!?」

「ええ、平気・・・」


何とか声を絞り出せたころにはぐるぐる感も収まり、変なことをしてしまったと後悔しつつマックから離れる。

とっても頑張ったお陰でレイの姿は薄くなったけれど、店主と通りすがりの人たちの訝しげな視線を集めていることに気づき、一気に恥ずかしくなった。


「あ・・・マック、買い物を続けましょう!」


逃げるようにお店から離れて布のお店に戻ると、ハンナの顔がパッと華やいだ。

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