わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!


「リリさま、見てください。あの建物がそうじゃないですか?」


ハンナが馬車の外を指して声を上げた。リリアンヌも目をやれば、小高い丘の上にある白くて大きな建物がいくつか見えた。


「マックさまが、次のお宿は街を見下ろせる場所にあると、おっしゃってましたもの!」

「そうかもしれないわね」


ハンナが、きっとそうですよ!と嬉しそうに目をキラキラと輝かせる。

テントに始まりずっと宿泊費が安そうなお宿ばかりに泊まってきたのだ。

もしもあそこがそうなら、道中初の立派で綺麗なお宿ということになる。

王女に不憫な思いをさせなくて済むし、お食事もおいしいはずだと勝手に思う。

これが楽しみじゃないはずがない。

気がはやるのか、ハンナはウキウキと降りる準備を始めた。


メリーたちと別れた山間の宿泊地を出発してはや二日が経ち、一行は王都の一歩手前の街ミモザに着いていた。

ここで、旅で汚れた馬車を磨いたり馬の手入れをしたりし、リリアンヌを商人の娘からミント王国の王女へと変身させる手筈である。


馬車は坂道を登っていき、やがてゆっくりと停まった。


「リリさま、宿に着きました」


マックに声をかけられ降り立ち、目に入ったのは馬車から見ていた大きな建物ではなく、今までと同じような小さなお宿で・・・。

ハンナの表情がショックで固まるのを、リリアンヌは面白くみていた。


「さあ、ハンナ。お部屋に行きましょう。メリーが来るのを待たなければいけないわ」


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