夫の教えるA~Z
「“オオガミアキト” さんね、とっくに部屋に上がってますよ。
全くもう、何だって私が…ブツブツ」

「う…スミマセン」

急いでやってきた病棟の看護師長さんが、キビキビと私の前をゆく。

“これ以上騒ぎを起こされないように” とわざわざ迎えに寄越された彼女は、若冠イラついているようだ。

「はい、ここね『303号室』。
今日はご主人1人だけだから」

素っ気なく部屋番号を示し、彼女は白いドアを勢いよく横に引いた。

ガララッ。

「オオガミさ~ん、オクサン来ました~…よ…」

「アッキトさぁっん!」

ドアが全開になるとほぼ同時に、師長さんの脇をすり抜け、嬉々として駆け込んだ私は


そこに広がる情景に


「ハイ、もう一口。あーんして?」
「あ~……ん?」


絶句した。
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