夫の教えるA~Z
RRRR…♪

それは昼下がり。
1本の電話からだった。

「ハイハイハイハイ」

家電とは珍しい。

私はクリプレのつもりでチクチクと縫っていた、真っ赤に光るハート型クッションをソファに置くと、固定電話の鳴る方へと向かった。


「……大神シャチョーの奥さま…ですね?」

か細くて、聞き取りにくい女性の声。

「はぁ…えーっと……どちら様で?」

正確には “支” 社長なんだが。
会社のヒトじゃないのかなあ…

「……………」


「あの」
電話口で黙りこくった女を待って、もう一度尋ねようとすると、

「あ……あのっ、お、お願いがあるんです!」

彼女は突然、トンでもないコトを言い出した。


「彼と、大神シャチョーと別れて貰えませんか?」

は?


「は、はいぃ?!」

思わず声が裏返る。

それをきっかけに
女は急に勢いよく捲し立て始めた。

「お、奥様のお気持ちは解ります!
急にそんなコト言われたら、困りますよねっ⁉
ステキな方ですものね?

だけど、だけどね、奥さん。

私達……

出会ってしまったんです!」

陶いしれたように、彼女は声を張り上げた。


「そして……明日のイヴの夜、
ヤドリギの下。

甘い甘い口付けを交わして
互いの愛を誓うの。
そう。

これはもう、

『運命』なのよ!」
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