夫の教えるA~Z
戻る時は、しっかりと互いの指を絡ませて。
助手席に座ったは、ようやく意を決した。

「あの、私。お家をその…開けっぱなしで…」

シートベルトを閉めかけた手を止めて、彼はじっと私の横顔を見つめた。

「それから…その……心配してくれて…」

何でだろう。
素直なのは、私の唯一の長所だと思ってたんだけど…

“ごめんなさい”
の6文字が、どうしても喉で引っ掛かる。

どうしよう。

もしも彼に嫌われたら。

酷いことをしたことは、
もうとっくに後悔してる。

一生懸命探したあげくに、首絞められて、ガキみたいに拗ねられて…

“もういいっ” て、愛想をつかされてしまったら…

どうしよう。

それっきり動作を止めてしまった私の気持ちをまるで読んだかのように彼は、シートベルトを元に戻すと、フワリと笑んだ。

「…トーコちゃん。
今日は1つ、お兄さんが仲直りの方法を伝授しよう」

私が彼を向くと、

「はるかムカシからの決まりゴト。君がカレシとしたように、
ケンカの後は、君から___」

彼がそっと瞳を閉じ、頬を寄せた。

う…
そういうコト、か。

何だかひどくコソバゆい、でもあったかい気分。

せーのっ、
と呟いてから私が頬にチュッと軽く唇を圧し当てると、彼は擽ったそうに睫毛を揺らした。


「よーし、これで仲直り……⁉」
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