夫の教えるA~Z
「…………。
実は今、モノスゴク欲しいものがあるんだけど…」

ずいっ。

運転席の彼が、心持ちシートから体をずらした気がした。

「え。私、あんまり貯金無いんで。
高いものは無理ですけど…」

ギクリとして予防線を張った私に、彼はフルフルと首を振った。
「……イヤ、金は全くかかんない」

何だかやけに距離が随分近い気がするが…

思っている内にも、彼の重心は確実に助手席に移動してきている。

「トーコ。
実は俺、もう1つ更に深~ぁく仲直りできる方法を知ってるんだ」

彼の指が、頬にかかった後れ毛を避けた。

「へ~、サスガ物知りなんですね~。けれどもう十分では…
ひゃっ」

途端、慣れた手つきで助手席のシートが倒された。

「俺は思うんだ…
夏子ねえちゃんの君へのプレゼントは、俺へのプレゼントでもあったんじゃないかって」 

大真面目に語る彼の目が興奮に血走っている。
 
ンな訳あるかーーーっ!

状況を理解した私は、乗り上げた彼を必死に押し返しつつ説得にかかった。

「お、落ち着いて秋人さん、
そういうことはオウチに帰ってユックリと…」

「ヤダ、トーコを抱きたい。今すぐに」

イカン、駄々っ子状態になっている。

そりゃあ1月ぶりだし、私だって決してイヤではないにはしても。

「だって…だってですよ⁉
ここ(車内)でそんな事したら今度こそ
夏子サンに殺されちゃう……んっ」
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