夫の教えるA~Z
来たときとは打って変わって、帰りの車はすっかりドライブ気分、恋人同士みたいな甘い空間と化した。

驚くことに昨日から何も食べてなかったという彼は、
“安心したらお腹がすいた” と、
途中のコンビニで沢山の食料を調達した。

海岸沿いの展望台に車を停めて、スゴい勢いで栄養補給をしている彼を真横に見ながら、私はふと思い出した。

「あーっ!
私。秋人さんへの誕生日のプレゼント、すっかり忘れてた」

カナシイことに独身時代の貯金が全く無かった私は、材料費500円の作りかけハート型クッションを家に置いたままにしている。

彼は私の叫びを聞くと、3個目の『特製豚まん』を食べる手をピタリと止めた。

「ふーん、そっか…」
「ゴメンなさいっ、エヘッ」

妙に上擦った声の彼に
手を合わせ、ペロリと舌を出した私は、
そこで彼のスイッチが切り替わったことに、全く気がつかなかった。
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