夫の教えるA~Z
 今宵、二人が過ごすは異郷の地。
 幻想の雪の夜の、いつもと違う情景は、ほんの少しだけ互いの気持ちを素直にさせた。

 私も……

 私は思いきって、普段は決してしない質問を投げ掛けた。

「ね、アキトさん」
「ん?」

「アキトさんは…他のヒトともこういうの。一緒に泊まったりしたことって…ある?」
「何だよ、急に」

 彼はすこし嫌のある声で、困ったように眉を潜めた。
「あ、ごめん、いいや。ウソウソ」

 私は慌てて引っ込めた。調子に乗りすぎてしまったみたいだ。


 が、少しの間を置き、彼は言った。

「__そりゃまあ、何度かはあるよ」

「…そっか…そうデスよね~、ははっ」

 いかん、聞いておいて落ち込んでしまった。仕方ない、過去と他人は変えられない。それも含めた彼なんだから。

 無理に腹に落とそうとしていると、彼は天井を見上げ、物憂げに続けた。

「だけど。
 同じヒトと2度行ったコトは…ないな。追いかけては逃げる、ゲームみたいなもんだった。
 終わったらどう切るか、そんなコトばかりを考えてさ。
 あの頃は肌を重ねるコトが、仲良くなるための手段(ツール)だなんて、考えもしなかったんだよなあ…」

「そ…」

 初めて彼の口から聞く過去には、羨ましいような華やかさの裏にどこか空虚と物哀しさが潜んでいる。

 しんみりと考えながら、私は彼の視線の向く方を追った。

 と__
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