夫の教えるA~Z
「はい、いらっしゃい」
透き通る声。

部屋には、春日(あのおとこ)がパイプ椅子に座って待っていた。

茶色の会議テーブルに、いくつかのパンフレットと俺への指南書(レシピ)であろうプリント。

「…どうも」

勧められるまま、男の対面に腰掛ける。

テンションだだ下がりの俺は、男のいやに明るい髪の色がやたらと目につき、思わず正面から目を逸らす。

プリントを片手に、男はにこやかに話りかけてきた。

「え…と“大神 秋人”さん、ですね。
初めまして、僕、春日といいます。夏子さんとトーコちゃんには、いつもお世話になっています」

「ええこちらこそ。
姉と《《 妻》》が、随分仲良くしていただいているようで」

《《妻》》強調。
コイツ、何ヒトの奥さんファーストネームで呼んでんだよ。
俺なんかな、出会ってから3年間、苗字呼びだったんだそ!

「さあて、挨拶もすんだことですし。
早速、始めましょっか」

言葉に含む(けん)には、全く気付かないようだ。
彼はニコヤカな表情を崩さず、プリントの説明を始めた。
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