夫の教えるA~Z
トーコが驚くのも無理はない。

籠手川まり子は、入ってからずっと、在庫品質管理室というわりかし地味目の部署に居る女性社員。
にもかかわらず、うちの社内に彼女の名を知らぬ者はない有名人だ。

というのも、彼女の占い、予言が百発百中で当たるから。
なんでも霊的なものだかオーラ的なものが見えるとか見えないとかで、あの豪気な社長ですら一目置いている。

さらには高校時代には恐山で修験者の業をつんでいたとか、宇宙人と交信できるとか、メンタリストと友だちだとか実家の父親が新興宗教の教祖だとか、ネクロマンサーだとか、根も葉もない噂と憶測が飛び交っている人物だ。
その彼女から…まさかこんな…

「ん?どうしたトーコ」

ふと見ると、トーコがものすごく軽蔑した顔をして俺を見ている。

「だって!
大神課長…じゃなかった。アキトさんってば、その他大勢には飽き足らず籠手川まり子さんにまで手を…もー、ドコまで節操ないんですかっ」

「いやまてトーコ誤解だ!
いや、誤解じゃないけど」

俺と彼女が関係を持っていたのは、おおよそ3年前。トーコが会社に入るか入らないかの頃で、しかも2ヶ月という短期間だ。

社長の命で彼女に託宣を受けに行った際、(社長は絶対に彼女に直接会わない。無用な難は避けるタイプなのだ)、
何故か、彼女の放つ独特の妖しい魅力に取り憑かれてしまい、気がついたら口説いていて、気がついたら朝を迎えていたという有り様だった…
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