夫の教えるA~Z
「ヘエー、人間ドッグ、ですか」
「ああ、ちなみに犬《ドッグ》じゃないぞ。船のドックの方な」

「も、もちろんそのくらい存じておりますとも!」

大神家の夕食は遅い。
今夜も、10時から始まった食事の際、俺が切り出した話題に、トーコは目を丸くした。

「いいじゃないですか、しっかり診てもらったら。
ただ…アキトさんはあまり乗り気じゃなさそうですね。
何か心配事でも?」

「…やっぱり、分かるか」

「そりゃあもう!私が何年あなたの顔色を伺ってきたと思ってるんです。今日は叱られるか、叱られないかのデッドオアアライブ…私はね、オオカミさんの機嫌の良し悪しでその日の全てが決まるという、苦節の会社生活を…
あ、いや!
え~何でかな~?やっぱりアイの力かしら~?」

顔色を察し、素早く話を切り替えた彼女を後でどうしてくれようかと思いつつも、俺は本題を切り出した。

「その…最近こう、胃の辺りがキリキリする痛むことがあって…ま、そんなにって訳じゃないんだけどな」

「え…(もしかして2日前の牡蠣《アレ》…)」
「ん、何か言った?」

「あ、イエ別に。それでどうしたんです?」

「ああ、うん。それでな、もし、もしも結果が悪かったり。その…難しい病気なんかが判明したら、トーコはどうするかな~、なんて。
あ、別に怖いとか怖いとか、怖がってるとか、そういうんじゃ全然ないんだけどね、うん」

「アキトさん…」
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