夫の教えるA~Z
「さっきはあんな風に言ったけど…本当は私、今でも、どうしてもネガティブになる時があるんです。
何かある度に、そういうのもう止めようって繰り返し思うんですけど。
何でも出来るアキトさんには私、会社の時から、ずっと教えてもらってばっかりで。
それでもベタな失敗ばっか続けてしまって、いつまで経ってもお荷物で。
結婚したての今はよくても、そのうち彼にとって私は、全く需要がなくなるんじゃないか、とか、そのうちに、野心家でマジで社長の座を狙ってる彼をサポートできるような、相応しい人が現れるんじゃないか、とかとか」

「………」

少し黙った後、暫くして夏子はクスクス笑った。
それから…

「わぷっ!」

睡魔に襲われかけていたトーコの不意を突くように、目一杯、トーコに抱きついた。

「ち、ちょ待っ…」
「あっはは、やっぱトーコちゃんってばフワッフワ。めちゃ抱き心地いいわー。
あのさ、それこそ、全然心配要らないよ?」
「く、苦ぴ…」

「ああ、ごめんごめん。
あのね、むしろトーコちゃんに出会って色んな事をいっぱい教わったのは、寧ろ秋人(あいつ)の方だと、お姉さんは思うよ?
だってさ、ちょっと前のアイツなら、私に殴られてまで部下と私を取り持とうだなんて絶対にしないでしょ?」
「うむむ、確かに…でもそれはお姉さんや家族が大事だからで…ぎゅわふぷ」

反論しかけたトーコの頭は、意外に豊満な2つのたわわの間に押し込まれてしまった。

「やだもうかわいいっ。
ううん、アイツホントに、ここにきてすごく変わったんだから。間違いないよ、0歳の時から知ってる私が言うんだから。
なんていうの?その、アイツってさ、昔っから何でも小器用に出来る分、自己中だし、他人への思い遣り的なものが欠けてるとこがあったのよね。
それがここに来て急に、充たされたっていうか…
まあいいわ。
知ってるついでに言うとね、アキトにはこれからもずっと、絶対にトーコちゃんが必要」

「むっぐぐっ、そ、そうでしょうか?」

「そうよう。
…多分ね、どちらかが居なくなったら生きてけないのはさ、トーコちゃんじゃなくて、寧ろアキトの方。アイツ、泣きすぎて、干涸びて死んじゃうんじゃないかなあ」

「………」

「さあ寝よ寝よ!なんかさっきので元気出てきたわ。あっはっは。やっぱお互い自分のことって、分かんないもんなんだねー。私の悩み吹っ飛んだわ。
さー、明日も頑張ろー、ね?あれ?トーコたゃん、おーいトーコちゃーん?」

「…………」(気絶)
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