夫の教えるA~Z
「でね、昨日のアレはやっぱり…」

ピキッ。

ん?何か空気が凍ったような……
背中の辺りが妙に寒い。
 
嫌な勘が働いた私は、恐る恐る彼を振り返り、

そして顔色を失った。

額の青筋が……ハンパネエ!

「……トーコ……俺な。
済んだことをごちゃごちゃ言いたくないから、腹に納めるつもりだったんだ……」

彼は、クルリと私を逆に向かせた。

しまった。
どうやら寝た子を起こしたみたいだ。

「よ、良かったら納めっぱなしでケッコウですよ?」

「ヤカマシイわっ!
トーコ、いいか。
君は可愛い、ものすっげえ可愛いんだ」

「いやー、照れちゃう……」

ダメだ、目が怖くて茶化しきれない。

彼は私の両肩をガシッと掴むと、ユサユサしながら、一気に捲し立てた。

「一昨日あれだけ言ったのに。
性懲りもなくあの下着同然の姿を世間に晒しているのをバッタリ見かけた俺は……

危うく海からヨウセイさんが沸いたのかと錯覚したほどだ。
……心配なんだよ、君が拐われやしないかと。
昨日だって…俺が声をかけなけりゃ、拉致られていたに違いない」
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