ツインクロス
胸騒ぎと焦燥
翌日。
期末テストを明日に控え、放課後の学校内は独特な緊張感に包まれていた。

「あー、もうなるようになれって感じ。提出課題終わらせるだけで精一杯だっつーのー」
教室を出る際に、長瀬がぼやきながら天井を仰いで言った。
「まぁ…課題やりながら覚えろってことなんだろうけどな。確かに今回の量はハンパないよな…」
雅耶も相槌を打ちながら苦笑を浮かべた。

中間、期末等のいわゆる『定期テスト』は、実際のペーパーテストの他に、ノートなどの提出課題が成績にプラスされる方式になっている。その為、テスト自体の成績がどんなに良くても、提出課題が出ていないと内申点などに大きく響いてしまう仕組みとなっているのだ。
成蘭高校では、期末テスト終了後、その内申点をもプラスした順位が校内に貼り出されることになっている。その為、中間テストの時とは違った緊張感が生徒達の中には存在するのだった。

例のごとく、雅耶と長瀬に誘われるままに一緒に教室を出た冬樹は、二人の話に耳を傾けながら、その数歩後ろを歩いていた。
昨夜は、バイトの帰りにあった出来事などを色々考えていて、眠ることが出来なかった。ベッドに横になっていても、妙に目が冴えてしまって眠れなかったので、起き出して課題をやっていたら結局朝になってしまった。
その分、無事に全て課題は終えたのだが…。
(超…寝不足だ。ダメだ…今日は早く寝よう…)
冬樹は欠伸をかみ殺しながら、心の中で思った。


「…で、冬樹チャンは?」
「へ?」

突然振られた話についていけずに、間抜けな声を上げてしまった。
長瀬と雅耶がこちらを振り返って見ている。
「課題だよ。終わったか?って話」
雅耶が補足を入れる。
「あ…ああ、うん。一応終わった」
「終わったーーっ?全部っ!?」
長瀬がオーバーに驚きの声を上げる。
「うん…?一応…」
「えーーっ!冬樹チャン、確か昨日までバイト入ってたんでしょーっ?そんな時間いつあるのよーっ」
そんな長瀬の言い回しに、冬樹は思わず吹き出すと。
「いつって…。勿論、家に帰ってからに決まってるだろ?バイトしてたって、学業と両立出来なくちゃ意味がないからな…」
(もう、伯父さん達にも心配掛けたくないし…)
そう言って「日頃の積み重ねだよ」と、笑った。
「うはーっ!優等生発言っ!!」
「…今頃知ったのか?」

そんな風に長瀬とじゃれ合っている冬樹の様子を。
雅耶は物言いたげに見詰めていた。
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