ツインクロス
天敵襲来!
まだまだ暑さが続く中、成蘭高校の夏休みは終わりを告げた。
周辺の殆どの学校は今日から二学期が始まる為、駅前は様々な制服に身を包んだ学生達で溢れていた。
それが、それぞれの学校に向かって歩き続ける内に、だんだんと散っていって同じ制服の集団になって行く。そうして、見事に男ばかりになった成蘭に向かう集団の列の中に、冬樹もいた。
だが、その足取りはどこか重い。

夏休みの宿題は勿論しっかり終わっているし、学校が始まることに特別苦はない。…なのに、何故だか気が重かった。
先日聞いた、製薬会社の社員の男が拘留中に亡くなったことも、冬樹の気を重くしている原因の一つだった。あの社員の男にしても、大倉にしても…、自分には直接関係のない人物だ。だが、自分を連れ去って悪事を働こうとしていた二人ともが、捕まって一か月ちょっとの間にこの世を去ってしまうだなんて、そんなことってあるのだろうか?
(罰が下った…というには、あまりにも…。後味悪すぎだよな…)
冬樹は小さく溜息を吐いた。
その時…。

「おっはよー!冬樹チャンっ」

突然、後方から長瀬が現れて、肩を組むようにガッシリと腕を絡めて圧し掛かって来た。
「はよー。…ってか、重い…退け」
ジト目で睨むと、長瀬は嬉しそうに笑って冬樹を解放した。
「にゃはは。元気そうで何よりー♪」
「お前もな…」
相変わらずの長瀬の明るい笑顔に、冬樹の気持ちも少し浮上する。
そうしてそのまま二人、一緒に歩き出した。

「雅耶はー?一緒じゃないんだねぇ」
「ああ、部活。今日から朝練あるって」
「ほぇー…始業式当日から朝練とは…。流石運動部は気合が違うねェ」
「…だな」

そんな話をしながら、ゆっくりと校門の前を通り掛かった時だった。
「そういえば、冬樹チャン…雅耶から唯花ちゃんのこと何か聞いてる?」
「………?…いや…」

その名前を久し振りに聞いて、内心で冬樹はドキッ…としていた。
あの合コンの日以来、そこの所の話には全然触れていなかったから。
あの日に事件に巻き込まれてしまったというのが、大きな要因なのだとは思うが…。
夏休み中、雅耶と会うことは結構あったが、雅耶も彼女の話はしなかったのでオレも特に聞かずにいた。
…それだけだった。

(実際、オレにそこら辺の話をされても正直困るし…)
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