ツインクロス
だが、続けられた長瀬の言葉は、冬樹が想像すらしていなかった意外なものだった。
「何か、どうやらあの二人…別れちゃったらしいんだよね」
「……えっ?」
「あの合コンでカップル成立した奴等が、逆に雅耶達が別れちゃったってんで、原因とか何だったのかなーって気にしてるんだ。冬樹チャンなら何か聞いてるかなーって思ったんだけど…。そっかー、冬樹チャンにも言わないかぁ」
長瀬は天を見上げた。

(カップル成立した奴らもちゃんといたんだ…)

それさえも初耳だった。
でも、何だか腑に落ちなくて冬樹は言った。
「でも、もともと雅耶が嫌がってるとこを皆が無理やり合コン企画させたんだろ?今更、雅耶のこと気にしてたってしょうがないじゃないか」
「んー…まぁ、確かに…そうと言えばそうなんだけど…。冬樹チャン、…何か怒ってる?」
「別に…。でも、ホントのことだろ?」
冬樹は何だか面白くなくて、思わず口を尖らせた。
「そんな風に後から気にする位なら、最初からもっとあいつの気持ちも考えてやれよなって、…ちょっとそう思っただけだよ」
「うーん…。合コンに関しては散々催促してた手前、耳が痛いにゃー…」
「別に、お前達を責めてる訳じゃないけどな。それこそ、オレが怒ってたってしょうがないし…。雅耶だって別に彼女とのことを皆のせいにしたりはしない筈だよ」
そう言って冬樹が少し笑顔を見せると、長瀬は何故だか感心したように言った。
「冬樹チャンって一見クールそうなのに、情に厚いよねー。男前だにゃー」
「…そうか?」

(実は女なのに、散々『男前』って言われてるオレって何なんだろうな…)

そう思ったら可笑しくて思わず笑ってしまった。
すると、周囲を歩いていた生徒達が一瞬冬樹達に注目して固まった。
「………?」
隣で同様に頬を染めて固まっている長瀬に、冬樹は首を傾げると。
「どうしたんだよ?早くいかないと、そろそろ予鈴鳴るぞ?」
そう言いながら、そのまま歩き出した。
長瀬はその言葉にすぐに我に返ると「待ってよー冬樹チャーン!」と、慌てて後を追い掛けて行った。



そんな生徒達の登校してくる様子を、校舎の二階の窓から眺めている一人の人物がいた。
その人物は、生徒達の中に冬樹の姿を見付けると、ニヤリと一人口元に笑みを浮かべるのだった。

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