ツインクロス
終止符ー ピリオド ー
連れて行かれた夏樹を追い掛ける為、雅耶は冬樹達に同行させて貰い、一緒に並木の車に乗って神岡の会社の本社ビルへと向かっていた。


「俺も一緒に連れて行って貰えませんかっ?」

急いで車で追い掛けようと話し合っている並木と冬樹に、雅耶は自ら同行を願い出た。
冬樹は、雅耶ならそう言うだろうと大体予想していたので、並木の出方を待っていた。並木は、雅耶の真剣な表情から僅かな感情の揺れさえも見逃さないというように、じっと見詰めると静かに確認を取るように言った。
「あの子のことが心配なのは分かるが…。これから行く場所は、言わば敵の本拠地だ。さっきの様子だと網代組の関係者にも応援を要請しているようだし、かなりの危険は避けられないぞ?それでも行くと言うのかい?」
その言葉に。
「危険は承知の上です。でも、あいつが危険な目に遭っているのに黙って家で待ってなんかいられないです!」
僅かな心の動揺も見せず、雅耶はキッパリと言い放った。
そんな雅耶の後押しをするように、横から冬樹が補足を加えた。
「雅耶は空手もやっているし、即戦力にはなると思うよ。その辺は、僕が保証するよ」
並木は、暫く迷っている風ではあったが、心を決めると。
「じゃあ、雅耶くん…だったね。一緒に行こう」
そう言って、同行を許可してくれたのだった。

家の方には、電話で連絡を入れておいた。
時間が時間なので、母親は何があったのかと心配して、当然のことながら、なかなか理由を言わないと許可してはくれない様子だった。
だが、冬樹の身に大変なことが起きたということだけ説明し、
『理由は後で、ちゃんと説明するから…。お願いだよ。今、動けずにいたら俺は一生後悔することになる!』
そう、自分の気持ちを伝えると。
すぐ後ろで聞いていたらしい父親が、許可を出してくれたのだ。
その代わりに、
『自分の言葉と行動に責任を持て』
『人様に迷惑は掛けるな』
『そして、絶対に無事に帰ってくること』
という、条件付きで。

有難いと思った。

自分を一人の男として認めてくれたようで。
今の時点では、理由さえも何も語れない自分の『本気』を信じてくれたことが、何もよりも嬉しかった。

(そんな両親に報いる為にも、俺は絶対に夏樹を救ってみせるっ!…待ってろよ、夏樹…。どうか…無事でいてくれっ!)

閑静な住宅地から、徐々に煌びやかな街へと移り変わって行く景色を眺めながら、雅耶は決意を固めるのだった。
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