私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

さようなら 夏樹side


 ずっと、ずっと逃げ続けた。

 もう戻りたくなくて、戻らないために必死で。

 初めて知った“普通の学生”らしい生活が楽しくて、過去を捨てたつもりで2年を過ごした。

 あまりにも身勝手に逃げた罰が今目の前の光景なのだとしたら、俺はこの2年を、2年前に伸ばされた手を、後悔するしかない。

 軽傷らしいけど動けない志季のメンバー。

 そして、気絶するほどに傷つけられた秋奈と瞬桜の姿。

 誰がやったのかなんてすぐにわかる。

 2年経って、元々あった鋭い気配が更に鋭くなって、近寄りがたい雰囲気を前面に出してる。

 出来ることなら、もう一生会いたくなかった。関わりたくなかった。

 大嫌いで、恐怖しかないそいつは、ゆっくりと俺に視線を向けて、ニヤリと口角を上げる。

「よぉ、夏樹」

「…」

「元気だったか?あ?」

 2年で身長も伸びて、髪色も変えたのに一瞬で俺だと見抜く。

 まぁ、当たり前か。認めたくなんかないけど、こいつは、唯一血を分けた兄だから…。
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