あの日の君を僕はいつまでも忘れない。
『...へ?』
声が聞こえた方を見ると、わたしを見てふにゃっと笑う男の人がいた。
その人はわたしがいる窓の、隣の窓から顔を出している。風で髪がなびいて不意に どきっとしてしまう。
「あっ...僕は山川れも。...きみは?」
少し低めのその声がわたしの中でぐるぐるする。
『わたしは...笹谷さくら...』
声が震えてしまう。人と話すのが久しぶりで、どうも緊張してしまう。
「よろしくね」
そんなわたしにきみは笑って、そう言ってくれた。短い会話だったけど、れもくんが優しい人だということは、すぐに分かった。
会話が終わると共にチャイムがなる。
「またね、さくらちゃん」
『ま、またね!』
手を振ってきみが向かう教室は...隣のクラス。よく分からないけど少し期待してる自分がいた。
『友達...できた...?』
今更のようにさっきの出来事を思い出す。
そういえば、友達できたんじゃないか?わたし。今まで一人も友達なんて出来なかったわたしに、約十三年間生きてきて、今日やっと友達が出来た。
そんなことを考えていると、つい頬が緩んだ。
また会えるといいな。

