冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
第1章 拒否
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ギシッ、っと薄暗い室内の中でベッドが軋む音が響いた。
それに続くように、静かな空間に衣擦れの音、リップ音が溢れていく。
「ねえ……はやく来て」
ベッドの上で身をくねらせる女の口からため息と共に吐き出された言葉に、首筋を愛撫していた唇を彼ーー香月瑞季は徐々に下へと移動させていく。
鎖骨を通り豊かな胸の間を過ぎ、平らな腹部にキスの雨を降らせていくと明らかに女の口からもれる嬌声が変わっていった。
瑞季の唇が立てられた足の内股に触れると、いよいよ期待で女の蕾が綻ぶのを感じる。
官能的な香りは、嗅覚の鋭い人狼である瑞季にとってかなり刺激的な効果を生み出す。
すでに彼女同様、瑞季の準備もととのっている。
『そろそろいいか』
女の上気した肌を堪能しながら、レースのついた下着に手をかけたがーー場の雰囲気を壊す機械音が鳴り出し動きを止めた。
音の正体は、サイドテーブルの上に置いておいたスマートフォンだ。
相手によって変えてある着信音のため、面倒そうな相手や後回しに出来る相手なら出ないですむ。
が、今回の着信音は最優先の相手用である。
仕方がなく愛撫を中断して体を起こすと、相手の女性が抗議の声を上げたが瑞季は気にする様子も見せずスマートフォンに手を伸ばした。