冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
「すまない。迷惑をかけて」
「馬鹿言うなよ。血は繋がってなくとも、俺達は兄弟だろ。小さな事で謝るなよ」
「ああ……ありがとう」
瑞季は思わず笑った。
「まったく、お前はもう少し賢いと思っていたよ。今度、また小さな事で謝罪したら、そのケツを蹴り上げてやるからな」
ようやくリラックスとは程遠くも笑い声が聞こえてきて、少し安心しながら瑞季は電話を切った。
だが、すぐに今度はアニカに電話をかける。
医者らしいスピードで電話に出た彼女は、これからエミリの様子を見に行ってくれると約束してくれた。
もちろん、タダ出はない。
可愛らしい声で、新しく出来たレストランに連れて行ってくれと言ったのだ。
まぁ、たいした事じゃない。
アニカは信頼できる腕のいい医者であり、何よりも同じ人狼という身内の安心感がある。